研究紹介


バイオテクノロジーによる絶滅危惧植物の増殖と保存
神戸 敏成 
 富山県中央植物園では植物の展示のほかに、植物の分類や生態等に関する調査・研究を積極的に行っています。その中で私はバイオテクノロジーを用いた絶滅危惧植物や貴重植物の増殖と保存に関する研究を行っています。
 現在、地球上の多くの植物が環境破壊や人間による採集のため、絶滅の危機に瀕しています。ある外国の研究者は「21世紀になると1時間に1種類の割合で地球上から植物が絶滅する」と計算しています。日本においても5,300種あるといわれている野生植物のうち、実に26%に当たる1,399種が絶滅の危険にさらされていると報告され、オリズルスミレやオオキリシマエビネなどはすでに絶滅してしまったと考えられています。このような野生植物は無くなってしまっても私たちには影響がないように思われがちですが、自然の生態系が壊されてしまうばかりか、私たちの生活環境も変わってしまいます。中には癌やエイズに効果がある物質を作る植物もあり、実際に多くの植物から癌やエイズに効果がある物質が見つかっています。
 このような絶滅の危機にある植物を増殖して保存していくのは今日の植物園の重要な役割のひとつであり、ラン科植物を中心に約20種の絶滅危惧植物や中国雲南省から導入した貴重植物の増殖と保存に取り組んでいます。
これらの中にはエビネのように、かつては富山県でも普通に見られた植物が、観賞価値の高さから人間によって乱獲され、今日ではほとんど見ることができなくなってしまった植物もあります。中央植物園では富山県内に自生していた株から種子を採取して試験管内で発芽・増殖させています。数年後には植物園内に植栽しようと考えています。
 また、植物の新しい保存方法として、液体窒素(−196℃)中で植物の組織や細胞を保存する超低温保存法の研究を始めています。この方法を用いることによりたくさんの植物を小さなスペースで半永久的に保存することが可能になります。このような新しい技術の導入により、より多くの植物種を後世に残すための研究を継続していこうと考えています。
試験管内で増殖中のエビネ
(試験管内で増殖中のエビネ
Calanthe discolor Lindl)