研究紹介
| 中田 政司 | |||
| 植物の体は小さな細胞がたくさん集まってできています。細胞の中には核という構造があって、この核の中に遺伝情報をもったDNAという物質が入っています。細胞が分裂して増える時、DNAも複製されて2つの細胞に分配されますが、この時にDNAの入れ物として出現するひも状の構造が染色体とよばれるものです。顕微鏡で細胞を観察する時に使う色素によく染まったことから、染色体と名付けられました。 染色体は、例えばイネなら22本というように、同じ種類であれば同じ数を持っているのが普通です。しかし、種類が違うと数や形に違いが見られます。いろいろな種類の植物について染色体の数や形を調べると、植物の類縁関係や進化のようすがわかります。 例えば、富山県の固有植物エッチュウミセバヤは、分類学上は小豆島の固有種ミセバヤの変種という扱いにされています。染色体を調べたところ、どちらも数は50本でした。ところが形を比べると、一番大きな1対の染色体のくびれの位置が両者で違っており、染色体をDNA組成の違いで染め分けた結果にも違いのあることがわかりました。従って、両者は近縁ではあるが別のものであるという分類学的な扱いが、染色体レベルでも支持されることがわかりました。また、ある種類の染色体数がすでに知られている場合、調べたいと思う植物の染色体数を算定することで、本当にその種類であるかどうかが判ることがあります。 | 例えば、イネ科の帰化植物チクゴスズメノヒエは染色体数が40本ですが、よく似た基本種のキシュウスズメノヒエは60本です。植物園の大原技師が井田川で発見し、形態からチクゴスズメノヒエと同定された植物の染色体数を調べたところ40本で、染色体数からもチクゴスズメノヒエであることが確かめられました。中国雲南省をはじめ、各地から導入されている植物の再同定にも染色体数の確認は役立っています。
最近は特定の遺伝子が染色体のどの位置にあるかを観察する方法も開発されています(写真)。このような技術を植物園にも導入して、植物の進化のしくみを解明したいと思っています。 エッチュウミセバヤの染色体。染色体上のリボソーム遺伝子の位置を黄色に染め分けたもの。 | ||