研究紹介
| 大原 隆明 | |||
| サクラは日本人がこよなく愛する樹木です。しかし、単に「サクラ」という和名の植物は存在しません。「サクラ」は、バラ科サクラ属
Cerasusに含まれる野生種と、それらをもとに作出された園芸種の総称です。日本の山野に自生するサクラは現在8つの種(ヤマザクラ、オオシマザクラ、カスミザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、タカネザクラ、マメザクラ、チョウジザクラ)に分類されています。サクラといえば多くの方は、大きな樹木という印象が強いと思いますが、タカネザクラ、マメザクラ、チョウジザクラは人間の背丈ほどでたくさんの花が咲く低木です。私は、これらの低木性の野生のサクラを研究対象にしています。 これら3種のサクラは、地域ごとに少しずつ形態が変化していて、種内にもいくつもの変種が知られています。例えば、マメザクラの場合、富士山を中心とした地域に基本変種のマメザクラが自生するほか、関東地方の石灰岩地にブコウマメザクラ、北陸地方にはキンキマメザクラなどいくつもの変種が知られています。しかし、いくつ変種があるのかよく分かっていませんし、それぞれの変種間にどのような類縁関係があるかも分かっていません。これらを明らかにすることは、日本各地の植物相がどのように成立したかを解明することの一助になると思われます。 | また、サクラ類は異種間で交雑が起こりやすいことでも知られています。もっとも有名な例はオオシマザクラとエドヒガンの交雑により生じたソメイヨシノです。マメザクラによく似たヤブザクラという植物が関東地方南部にありますが、これがマメザクラとエドヒガンの間に生じた雑種がクローンで広がったものであることが、私の研究で明らかになりました。このように、種間の交雑がサクラ属の進化にどう影響したかを明らかにすることも、私の研究テーマのひとつです。 日本産のサクラのうち最も高所jに自生するタカネザクラ(富山県立山で撮影) | ||