研究紹介


渓流沿いに生きる植物たち
志内 利明 
 渓流沿いの植物rheophyteをご存じでしょうか?
 マングローブと言えば、河口付近の淡水と海水の混じりあう汽水域に適応した植物のことで、高山植物と言えば、森林限界より上の高山帯に主な生活の場所を持つ植物というように、渓流沿い植物とは、河川の渓流部の降雨によって水位が増減する地帯(渓流帯)に適応して進化した植物のことです。渓流沿い植物は、雨が降り水量が増すと水流に飲み込まれ、雨が降らないときには、岩場が多くしかも樹木に覆われていないため非常に乾燥するという過酷な環境に生きています。そのため、渓流沿い植物は、葉を流線型にしたりして、簡単には水流に流されないようにし、また気孔数を減らすなどして乾燥にも耐えられるように進化を遂げ、他の植物が生活できない渓流沿いという厳しい環境で生き抜いています。
 渓流沿い植物はサツキ、ヤシャゼンマイ、ネコヤナギ、センボンギクなど様々な分類群に見られます。日本は年間の降水量が比較的多く、河川の水の流れが速いため多種の渓流沿い植物が分布すると考えられるものの、実際には日本に何種あるのかさえ判っていないのが現状です。また、最近では、ツリガネニンジンの仲間にも新たに渓流沿い植物と推測されるものが見つかっています。
 この植物は明らかに葉が線形になり、全体にしなやかで、今のところ限られた地域の渓流沿いにしか見られません。調査が行き届いていないため、このように新たな渓流沿い植物が見つかる可能性もあります。その一方で、護岸工事や河川環境の汚染のため渓流沿いに生きる植物が減ってきていることも事実です。渓流沿い植物は日本にいったい何種分布するのかという基礎的な情報の収集の他に、渓流沿い植物の保全、また渓流環境への形態的、生理的な適応という植物の進化に関わる問題も解明したいと考えています。渓流タイプのツリガネニンジンの仲間