研究紹介
| 高橋 一臣 | |||
| 私は関東の出身で、信州で大学時代を過ごしました。北陸にやって来て驚いたのは、冬の天気がまるで異なることに加えて、山などを歩いているときに見かける植物や植生の様子が、太平洋側とは違っていることでした。日本列島の植物の中には、日本海側にかたよった分布をする種類がかなりあるためです。 日本海側に特有な植物群を”日本海要素”と言います。もっとも、これは現在の分布パターンをもとにひとまとめにした呼び方ですから、そのなかにはさまざまな来歴をもつ植物が含まれていると考えられます。シラネアオイやトガクシショウマなどは、太平洋側には近縁な種類が見あたらない例で、古い起源の植物の生き残りと言われます。一方、日本海側のハイイヌガヤに対して太平洋側のイヌガヤ、マルバマンサクに対してマンサク、スミレサイシンに対してナガバノスミレサイシンというように、近縁な種または変種が、日本海側と太平洋側で地理的に置き換わるように分布している例が多くあります。富山県中央植物園では、県内の植物相の解明や絶滅危惧植物の保存などに加えて、こうした日本海要素植物の分布や分化に関する研究を行っています。さて、私が研究の対象にしているのはササの仲間です。ササ属は非常に多くの種が各地から記載され分類が混乱していましたが、その後の研究で、日本海側と太平洋側で積雪量の違いに対応した分化が認められることが明らかにされています。日本海側には、稈(イネ科植物の茎)が分枝するチシマザサやチマキザサの仲間が分布します。一方、冬のあいだ積雪によって保護されることがなく、低温や乾燥に直接さらされる太平洋側には、稈の地上部の節に芽が形成されず、枝を出さないミヤコザサの仲間が分布します。 | ところが太平洋側でも伊豆や箱根、滋賀県の伊吹山など、ある程度積雪のみられる山地に分布するアマギザサ(イブキザサ)の仲間では、稈の上部から枝を出し、日本海側のチマキザサなどと識別が難しい場合があります。現在は、中部地方を中心に日本海側〜太平洋側のチマキザサやアマギザサの集団を調査し、形態の変異の解析を進めています。 太平洋側の山地に分布し、稈の上部から枝を出すアマギザサの仲間 | ||