研究紹介
| 山下 寿之 | |||
| これまでブナ科のシイやカシ類が優占する森林の更新についての研究を行ってきましたが、1998年秋からは、カシの仲間で九州南部と四国南部にのみ分布し、絶滅危惧種に指定されているハナガガシ(Quercus hondae Makino)を対象として、その分布と地形の関係についての研究を進めています。ハナガガシが富山県からは遠く離れた地域に分布することから、宮崎大学農学部助教授伊藤哲先生との共同で研究を進め、調査にあたっては同大学農学部附属演習林の協力を得ました。 ハナガガシが優占する林は社寺林などの一部で、ほとんどは渓谷の斜面に広がるコジイ(ツブラジイ)を中心とした二次林内に出現します。西日本のコジイ二次林はかつて薪炭林として、あるいはシイタケのホダ木採集として定期的に伐採されてきた林で、現在も同じように利用されている所がかなりあります。このような人為の影響のほかに、道路建設やスギの植林などによってコジイ二次林は減少しています。したがってハナガガシの生育地も減少の危機にさらされています。これまでにハナガガシの広域的な分布は全て明らかにされていませんし、ハナガガシの生態についても詳しく調べられていません。現在進行中の調査では、ハナガガシがどのような場所(地形)に出現し、どのように個体群を維持しているかを明らかにすることを目的としました。 | 調査は宮崎県田野町の宮崎大学農学部附属演習林内のコジイ二次林(約40年前に伐採)内に尾根から谷までの斜面を含む1haの調査区を設置し、胸高直径5cm以上の樹木の直径の測定をしました。さらに、調査区の半分の0.5haを5m間隔に区切り(5m×5mの小方形区200個)、それぞれの小方形区内で低木層(高さ2m)と草本層(高さ0.6m以下)の植生調査を行いました。 調査結果からハナガガシはコジイ二次林の中でも下部谷壁斜面(谷底よりもやや上部の急傾斜)を中心に分布することがわかりました。また、草本層のハナガガシの稚樹は尾根頂部から谷底まで広く出現しますが、下部谷壁斜面、麓部斜面、谷底面では高い出現頻度を示します。これは母樹が近くにあることや稚樹の定着に土壌水分が影響していることが考えられます。また、低木層を構成するハナガガシの幼樹は撹乱の影響をうけやすい上部谷壁凹斜面と谷底面以外の場所で、比較的高い出現頻度を示します。このことは草本層から低木層へ成長する間に撹乱によって定着できないことが考えられます。 現在、ハナガガシの稚樹の定着過程での他の構成種との関係について、解析を進めています。また、今回明らかになったハナガガシの分布と微地形との関係をもとに、広域的に分布地をさがす予定にしています。 | ||
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| 調査地斜面 | ハナガガシの芽生え | ||