| メタセコイアとスギ科の針葉樹 メタセコイアの仲間はもともと化石だけが知られていたもので、以前はセコイア属(Sequoia)やヌマスギ属(Taxodium)の植物とされていました。この化石を研究した三木茂(1901〜74)は、葉、枝、球果の鱗片が対生するというセコイア属などとは異なる特徴を重視し、1941年に新属メタセコイア(Metasequoia)を設立しました。奇しくもちょうど同じ年に中国四川省の磨刀渓(現在は湖北省)で発見された樹木が、生きているメタセコイア属の植物であることが確かめられ、1948年にメタセコイア・グリプトストロボイデス(M.glyptostroboides)として正式に報告され、注目を集めました。 メタセコイア属の化石の記録は中生代白亜紀後期(9600万〜6500万年前)までさかのぼります。新生代第三紀の暁新世(6500万〜5500万年前)から始新世(5500万〜3800万年前)にはヨーロッパを除く北半球に広く分布し、北極圏周辺にもメタセコイアの大森林が広がっていました。その後、気候の寒冷化にともなって北極周辺から姿を消し、分布域を縮小していきます。日本列島では、北半球の他の地域からはほとんど消滅した第三紀鮮新世(510万〜170万年前)から第四紀更新世前期(170万〜73万年前)になっても繁栄しましたが、約80万年前に消滅しました。 メタセコイア属が含まれるスギ科には、現生のものは9属が知られています。裸子植物の針葉樹類のうち、マツ科には第四紀の寒冷な気候に適応した種が多くみられ、連続的な広い分布をしているのと対照的に、第三紀に北半球に広く分布していたスギ科の植物は、今では限られた地域に残存しています。各属に含まれる種数も1種からせいぜい2、3種と少ないのが特徴です。現在、日本にはスギ属(Cryptomeria)のみが自生しますが、かつてはメタセコイア属をはじめ、スイショウ属(Glyptostrobus)、ヌマスギ属、セコイア属、コウヨウザン属(Cunninghamia)などが分布していたことが化石の記録からわかっています。一方、以前はスギ科に含められたことがあるコウヤマキ科のコウヤマキ(Sciadopitysverticillata)の仲間も、過去には北半球全域に分布していたことが知られていますが、現在は日本列島だけに生き残っています。 | ![]() メタセコイア属の化石(左)と現生のメタセコイア(右) 生きた化石として有名なメタセコアイアは、現在は中国の一部のみに自生するが、かつては北半球に広く分布していた。化石は米国モンタナ州の暁新世の地層からのもの。 ![]() トメタセコイア(左)とヌマスギ(右)の葉 秋には葉が小枝についたまま落葉する。 メタセコイアでは葉が小枝に対生する(2枚ずつ向かい合って付く)ことに注意。 ![]() 限られた地域に残存的な分布をするスギ科の針葉樹とコウヤマキ 1:メタセコイア 中国の四川省東部から湖北省西部に分布。「雲南の植物エリア」周辺 2:ヌマスギ 北アメリカ南部の湿地に生える。「球根植物エリア」周辺の池のほとり 3:スイショウ 中国南部の湿地にみられる。「雲南の植物エリア」 4:コウヨウザン 中国中南部からベトナムに分布。「雲南の植物エリア」 5:コウヤマキ 1科1属1種の日本の特産植物。「ボタン・シャクヤク園」周辺 | ||