漢字では福寿草と書き、おめでたいことからよく正月の寄せ植えの鉢に使われ、別名を元日草(がんじつそう)ともいいます。植物園ではクリ・コナラの森で2月中旬頃から咲き始め、花は3月いっぱい見ることができますが、終わり頃には茎が伸びて葉もシダのようによく茂るので、写真のような可憐な姿とは別人のようになります。
このように春いち早く花を咲かせ、上の木々が葉を茂らせる前に光合成を行なって養分を地下に蓄え、初夏の頃には地上部が枯れてしまう植物のことを春植物(スプリング・エフェメラル)と呼びます。カタクリやコシノコバイモなども春植物です。
フクジュソウは被写体として「絵になる」植物の一つなので、写真を趣味にされる方に人気です。しかし、曇りの日や夕方には花が閉じてしまうので、撮影には晴れた日を選ぶ必要があります。花の色は鮮やかな黄金色ですが変異が多く、江戸時代には橙色や緑色のもの、花が八重になったものや花弁が細くなったものなど百種類以上もの園芸品種が栽培されていました。残念ながら現在では、わずか四〇種類ほどしか残っていないそうです。
古くから園芸植物とされていたため自生地では盗掘が絶えず、一時は国の絶滅危惧植物に指定されていました。最近のレッドリストの見直しではランク外になっていますが、これは各地で保護対策がとられ、保護意識も高まったため危険性が低下したという判断で、決して個体数が増えたというわけではありません。富山県も含め、自生地のあるほとんどの都道府県では依然として絶滅のおそれのある植物に指定されています。
美しい花ですが、意外と強い毒があることはあまり知られていません。山で見かけても、触らないで写真に撮るだけにしておいた方が無難です。